社会保険の調査と実例

 法人であれば社会保険へは強制加入です。実際に加入していないところが存在するわけですが、加入が義務付けられているので法令違反を犯していることになります。そのため常に調査に神経をとがらさないといけません。別頁で今後の調査に対する詳細を示しておりますが、労働者やその親族または退職者による申告調査があることも注意しなければなりません。この調査は匿名でも受け付けてくれますし、名前を名乗っても匿名希望とすれば調査官も名前を出しません

そのために従順な労働者であってもその奥さんが社会保険がないのを不満に思い社会保険事務所に相談へ行ったらそこで強制加入が待っております。もちろん調査官も人それぞれですから、そのうちに加入する旨と理由を言えば暫く見逃してくれるかもしれません。ただし情報が社会保険事務所のデータに残るために調査官や行政協力を行っている社労士が何回も事業所に訪れます。

また会計検査院の調査(厳しいので有名)も平行して行われている可能性があることから、ここで指摘されると先ほどのような「そのうち加入します」などという甘い言い訳が通じるどころか、過去に遡って(2年間)強制加入される可能性が高くなります

調査の実例(内容は一部変更してあります)

滋賀県で飲食店を5店舗営む株式会社Aは、以下の従業員(店長など正社員14名、パート・アルバイト19名でうち社会保険加入対象者9名)を抱えておりますが社会保険に加入はしていなかったとのことです。同業種では社会保険加入が少ないこと、周りの社長も社会保険に加入していないところが多かったことが原因でありました。

しかし、その会社の従業員である店長Sさんは最近子供ができたこと、国民健康保険も以前の滞納を一時金で支払わないと保険証が発行されないと役所から言われていたので、社長に社会保険加入を願ったのですが、退けられました。そこで店長Sさんは社会保険事務所に相談に行って強制的に加入するように依頼しに行ったそうです。暫くして調査官が事業所を訪れて加入を促しますが、社長は「社会保険に加入したら利益が吹っ飛ぶ」など理由にならない言い訳でこの調査官を追い返しました。

1ヵ月程して社会保険事務所からハガキが来て呼び出しがありましたが、ここでも社長は強気で拒否しました。幸いこの調査官も厳しい方ではなかったので・・・。

「また連絡します」

と苦笑いされていたとのことです。
そのような状態が2年ほど続いた後、会計検査院調査の連絡がきたとのことです。ハガキで「会計検査院からあなたの会社が故意に社会保険加入していないという疑いがあります。○○日社会保険事務所に来ていただきたい旨と出勤簿と賃金台帳を全て過去の分までお持ちください」・・・そのような通知がきたそうです。

調査当日、社会保険事務所に訪れたとき以前の担当者が受付で待っておられましたが、いつもと様子が違い少し緊張されていたとのことです。

「本日は会計検査院による調査です。事実だけを簡潔に答えて下さい」

それだけを言った後、応接室に案内されたとのことです。応接室には検査院の担当者らしき担当者がおりました。

担当者 「あなたの事業所は社会保険に意図的に加入していないと考えております。今回は書類を持参してきてもらっていると存じますが、もし不明瞭な点があれば、貴事業所へ直接調査することも考えております」

ここで社長はようやくこれが今までのような甘いものではないと考えたとのことです。

担当者 「では出勤簿、賃金台帳を見せてください。」

担当者が一通り書類を確認すると、暫くして電卓で計算しています。

担当者 「あなたの会社は平成○年の7月から強制加入となります。いまここで資格取得届を提出していただきます。それと月々の報酬を今計算しております。追って正確な額をお知らせしますが、だいたい1100万円前後支払っていただくことになると思います。これは労使折半ですから、従業員の方にも2年分支払っていただきます。急な出費となるはずですので、事前にお伝えしておいてください。なお時効が2年ですので、来月になれば24分の1が時効消滅することと意図的な徴収逃れがあるため来月までに支払っていただくことになります。

社長はここで動転され、私に相談をされましたがこの時点でもうどうにもなりません。

社長 「このようなことは納得できません。このようなことが許されるのでしょうか?」

社労士 「そうおっしゃっても法律では加入義務があるためにどうにもなりませんよ。」

社長 「でも担当者に以前加入できないことを伝えたら、そんなに厳しい態度もとっていなかったんです。」

社労士 「会計検査院はイレギュラーに行われる調査で通常は業種や地域を狙い撃ちして実施されます、主旨は社会保険事務所が適正に徴収業務を行っているかの調査も兼ねております。調査前に連絡いただければ対策がとれたのですが。あと高齢者で年金を受給している方がいれば年金の返還も請求されますが今回はそれはなかったのが不幸中の幸いです。」

社長 「実は会社を潰そうと思っております。会社負担も相当ですが、従業員負担も厳しいとかんがえております。このままいけば幣社が全て負担しなければならない可能性があります。」

社労士 「第2会社へ業務を移行する考えをお持ちのようですが、残念ながら厳しいと考えます。」

社長 「・・・」

社労士 「債務が多額になって事業の継続に問題が生じたときに、その会社を潰して、別の第2会社を興すことは実はよく行われております。これは民間の債務では有効ですが、残念ながら租税公課や社会保険料あるいは国民生活金融公庫や信用保証協会の債務については第2会社を同一の事業主とみなしますので仮に第2会社を興してもそこに請求が間違いなくくるでしょう。

社長 「もう払うしかありませんか?」

社労士 「そうですね。ただし支払い方法においては交渉できると考えられます。」

 今回の件で多くの従業員が退職したため、多くの従業員負担分の金額を会社で支払わざるを得なくなりました。莫大なキャッシュが吹っ飛び、さらに有能な従業員も多く失われました。