社会保険の現状
 2004年に年金制度改革法によって、厚生年金制度の引き上げが決定いたしました。

  当時厚生年金保険は年収の13.58%(労使折半)でしたが、この法案により2017年まで毎年0.35%ずつ引き上げられ、最終的には18.30%で固定されるというものです。単純計算でも年収500万円の社員であれば事業主負担で年間12万円以上の負担増になります。これに従業員数を乗じるとどうなるでしょうか?非常に大きなキャッシュアウトになるのは明らかです。

  現在の制度についてはまだ議論が多く、さまざまな課題を内在しており、このままの制度を運営していこうとすればさらに保険料を上げるか、消費税を引き上げて国庫負担を引上げる、それ以外では健康保険の自己負担額を上げる、厚生年金の給付水準を引下げるなどの選択肢しかありません。

  しかし現状ではそのような大改革がすぐになされる可能性は低く、仮にそのような大改革をするにも下地が必要なため、最初に行政機関が考えることは社会保険料の公平な負担をいかに実現するかということです。同様に問題となっている国民年金制度も、まず未納者問題が挙げられるように国民が納得しなければ仮に制度の大改革を行ったとしても絵に描いた餅に終わってしまいます。

 このような事情から社会保険庁は様々な取り組みをしていますが、まず最初に行われるのは社会保険の不公正の是正、とくに社会保険未適事業所の問題が挙げられます。特に今年に入って民営化や解体問題によって社会保険庁も本気でこの問題に取り組んできております。以前は従業員20人以上の会社が強制対象になっていましたが、現在はハードルを下げ、従業員5人以上の企業や個人事業者も対象に加えられています。

  行政機関の考え方は、上記の未適事業所の強制加入から始めパートタイマーなどの対象者拡大、被扶養者の対象者の縮小等の不公平措置をなくしたうえでないと、制度改革はできないと考えているようです。

 そのような事情から最近以下の制度改正が行われています。

ハローワークの求人で社会保険に加入していない事業所からの求人を受けてもらえなかった!!

建設業や派遣業の許可をもらうのに社会保険加入していないと受け付けない都道府県が増えている!

雇用保険の助成金を申請するのに社会保険加入を確認された

調査で税務書類を照合されるようになった

従業員からだけではなく家族、匿名でも社会保険未適の苦情を受け付けてくれるようになった

さらに現在パート従業員の加入義務は一般社員のおおよそ75%(日及び時間)以上となっておりますが、現在議論でこの75%ルールを50%に引下げる方向で検討されております。

現在のパート労働者の総数は1080万人に達し、うち社会保険に加入している者は約40%の432万人になります。もしこの制度が実施されれば、残りの大半である600万人以上が対象になると予測され、その大半が外食産業、流通産業、あるいは中小企業の雇用者になります。パート1人の平均給与を8万円と換算して計算すれば1人あたりの企業負担額は年間約13万円となり、そこで働くパート労働者数で乗じていくと明らかになります。専門家や経済団体の意見によれば、もし制度が実施されれば、パート労働者を多く活用する中小企業では一気に利益が吹き飛ぶそうです

その他にも介護保険の対象年齢引き下げ問題や保険料改定の動き、年金開始年齢の引き上げによる実質賃金の上昇、さらには徴収業務の強化や民間機関への委託など企業にとって今後ますます難しい局面が予想されます。つまり、十分な社会保険対策をしていかないと企業は生き残れないと私は考えています。

それでは現状企業が十分といえる社会保険対策をしているのでしょうか?

答えは明らかにNOです。せいぜい派遣社員の活用、パートや嘱託社員の活用くらいではないでしょうか。また例え対策をしているとしても長期間保険に加入させない企業や擬装請負の可能性の高いものなど、明らかな不正行為に近い方法によって減額している例が多く、このような方法で抜本的な解決を図ることには無理があり、かつ、企業コンプライアンスからも大いに問題があると考えます。

各種控除を用いて税金を節税する税理士とは異なり、社会保険の専門家である社会保険労務士がそのようなマーケットを作ってこなかった責任も大いにあると私は考えております。多くの社労士は手続業務や給与計算だけをメインに行っているため、そのような企業の要望を掘り下げて考える者が少なかった

あるいは、そこまで社労士が期待されていなかったなど理由は様々あるでしょう。