第八章 退職金

(退職金の支給)
第42条
 勤続○○年以上の従業員が退職し、又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、第55条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。

(退職金の額)
第43条
1.退職金の額は、退職又は解雇時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた別表の支給率を乗じた金額とする。
2.第9条により休職する期間は、会社の都合による場合を除き、前項の勤続年数に算入しない。

(退職金の支払方法及び支払時期)
第44条
 退職金は、支給の事由の生じた日から○○ヶ月以内に、退職した従業員(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

上記規定の解説・問題点

 そもそも退職金制度を設けるかどうかは、会社の自由です。退職金の支払いは法律で定められているわけではありませんので、退職金制度を設けないとしても構いません。しかし、就業規則(退職金規程も含む)に退職金に関する事項を定めてある場合には、会社は退職金支払いの義務が生じることになります。
 そのため、退職金制度を設ける場合は、慎重にその内容を検討しましょう。
  退職金制度を、作成して支給する場合には、その旨を就業規則に定めておかなければなりません。この場合、賃金と同様に、就業規則本体で詳細に定めるのではなく、別規程を作成しておくのが一般的です。
  退職金制度の内容には、現在、様々なものがあります。基本給連動型、定額制、ポイント制、別テーブル方式、中退共利用型・・・etc。各社の実情に合わせて、最適な退職金制度を構築することが大切です。

 退職金規程では、適用される従業員の範囲、退職金の決定・計算・支払方法、支払いの時期に関することを定めます。パートタイマーに対しては、退職金を支払わない場合や別の方法により支払う場合には、その旨を定めておかなければなりません。パートタイマーを適用除外にしておかなければ、正社員と同様の退職金を支給することにもなりかねません。

 また、「懲戒解雇の場合、退職金は支給しないまたは減額する」との規定は一応有効と考えられますが、その場合、懲戒解雇の処分が現実に実施されなければなりません。したがって、退職後に懲戒解雇事由に相当するような不正が発覚した場合は、さらに懲戒解雇措置をとることは出来ないため、発覚前に退職してしまった以上その者が退職金請求権を持っているといわざるを得ません。 退職金の没収、減額、返還は就業規則に規定していなければ法的にも、実務的にもこれを行なうことは難しくなります。後になって不正が発覚した場合はなおさらです。 そこで、 退職金規程には、後になって不正が発覚した場合にも対応できるようにしておきます。 また、退職後一定期間内に競業他社に就職した場合や競業する業務を自衛する場合にも退職金の減額規定は一応有効とされています(地位・職種・期間等の合理性が求められる)。 なお、退職金の全額没収は、使い込みや著しい背信行為などのような「これまでの会社に対する貢献をすべて抹消するような背信行為があった場合のみ有効」との裁判例がありますので、これらの運用には注意が必要です。

  退職金の支払時期については、就業規則(退職金規程)に定めた時期に支給すれば良いことになっています。在籍中の非行行為調査に時間がかかることも考えられるため、ある程度余裕を持たせた方が良いでしょう。

 退職金は、金額が大きいだけにトラブルに発展し、最終的に裁判沙汰になることも少なくありません。慎重に規定する必要があります。