第三章 服務規律

(服務)
第10条
 従業員は、会社の指示命令を守り、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、職場の秩序の維持に努めなければならない。

(遵守事項)
第11条
 従業員は、次の事項を守らなければならない。
 (1)勤務中は勤務に専念し、みだりに勤務の場所を離れないこと
 (2)許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと
 (3)職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受けるなど不正な行為を行わないこと
 (4)会社の名誉又は信用を傷つける行為をしないこと
 (5)会社、取引先等の機密を漏らさないこと
 (6)許可なく他の会社等の業務に従事しないこと
 (7)性的な言動によって他の従業員に不利益を与えたり、就業環境を害さないこと
 (8)その他酒気をおびて就業するなど従業員としてふさわしくない行為をしないこと

(セクシャルハラスメントの禁止)
第12条
 相手方の望まない性的言動により、他の従業員に不利益を与えたり、就業環境を害すると判断される行動等を行ってはならない。

(出退勤)
第13条
従業員は、出退勤に当っては、出退勤時刻をタイムカードに自ら記録しなければならない。

(遅刻、早退、欠勤等)
第14条
1.従業員が、遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用外出するときは、事前に申し出て許可を受けなければならない。ただし、やむを得ない事由で、事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出なければならない。
2.傷病のため欠勤が引き続き「  日以上」に及ぶときは、医師の診断書を提出しなければならない。

上記規定の解説・問題点

服務規律は、就業規則において職場の規律保持に関して中核をなす規定で、非常に重要なものです。服務規律は、社員が日常守らなければならない一般的な心得や遵守すべき事項を定めたものであるため、それぞれの会社によって異なり、その内容は多種多様、多岐に及びますので、網羅的に記載するのが通常です。この服務規律によって維持される会社の秩序は懲戒処分によってその実効性が担保されます。しかし、服務規律違反があったからといって、当然に懲戒処分ができるわけではありません。懲戒処分を行うためには、さらに以下の要件を満たす必要があります。
1.懲戒事由と懲戒手段が就業規則等に明記されていること。
2.懲戒の規定内容合理的であること。
3.平等な取り扱いであること。
4.懲戒処分が規律違反に照らして相当であること。
5.本人に弁明の機会を与えるなど適正な手続きを経ること。
 よって上記のような服務規律では、かなり不十分と言えます。会社に合わせて、より具体的により詳細に規定する必要があります。

  服務規律の中でも特に重要なのは、セクハラ規定、個人情報保護に関する規定、秘密保持義務規定、競業避止義務規定です。
 セクハラについては、いまだに軽んじて考えている会社も少なくありません。しかし、近年は、 セクハラに関する訴訟も多く、なにより企業のイメージダウンにつながってしまうため、有能な社員が集まらなくなったり、会社を去ることにもなりかねません。さらに、セクハラがある環境の悪い職場では、社員も仕事に集中できず、生産性の低下にも繋がるでしょう。それらを、防ぐためには上記のような規定だけでは足りず、より具体的にどのような行為を禁止するのか、また、セクハラに関しての相談・苦情の窓口も明確に定める必要があります。
さらに、加害者に対する制裁規定も設けておけば、セクハラを未然に防ぐ効果も期待できます。

  在職中、社員は当然に企業秩序遵守義務を負っているため守秘義務がありますが、退職後についてまで規制するのは困難です。ただ、秘密保持についてはむしろ退職後に問題になるケースが多いため、それに対応するためにも 秘密保持契約を取り、その契約書の中では損害賠償等についても定めておきます。会社の顧客情報等の営業秘密は、会社にとっては一つの財産であるため、その重要性は言うまでもありませんが、会社の機密について、在職中はもちろん、退職後も不正取得、不正な目的での利用、開示を防止することが必要です。不正競争防止法にも「営業の秘密」に関する定めがありますが、定めの無い部分はやはり就業規則で対応するしかなく、就業規則に定めが無ければ、社員の責任を問うことはできません。
  また、社員が同業他社へ転職したり、自ら同業を営むことを禁止(競業避止義務)する規定も盛り込むことは重要です。憲法により「職業選択の自由」は保障されているため、一定の制限はありますが、一定の社員に対しては 就業規則等で定めることにより、競業避止義務を課すことは可能となりますし、損害を受けた場合は損害賠償を請求できる場合もあります。
 上記以外にも、例えば、各種の届出を速やかに行なわなければならない旨の規定や、インターネットを利用している会社であれば、利用に当って社員が遵守すべき事項等についても定めておきます。
 
 遅刻、早退、欠席もトラブルの多い項目です、上記のような規定では、トラブルを防ぐことは出来ません。様々なトラブルを想定して、工夫した規定を盛り込む必要があります。